恋せよ乙女

ただでさえ近い距離を縮めるように、鈴木さんは一歩前進する。


「やっぱり私、あなたのそういうところも大っ嫌い。」


そしてそう言い放つとともに、再び振り上げられた右手。すぐに、また頬を打たれるんだろうなと予想はできたけれど、あえて避けることはしなかった。

だって、どんなに理不尽で非合理なやり方や言い分だとしても、鈴木さんの気持ちがまるっきりわからない訳ではないから。

ただ、彼女が氷室さんを好きだという気持ちは、あたしと何等変わりは無い。

ゆっくりと、スローモーションのように流れる視界に、再び訪れるであろう痛みを予測し固く目を瞑る。

そして若干顔を伏せた刹那、ガラッとドアが開けられると同時に聞こえた、「香波っ!」と鈴木さんを呼ぶ聞き慣れた声に、ゆっくりと目を開いた。
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