恋せよ乙女

案の定、ドアのところに立っていたのは、少し呼吸を乱した氷室さんで。


「恭、君……?」


そう呟いた鈴木さんの右手は、あたしを打つことなく力無く垂れ下がる。


「あなたが、呼んでたの…?」


そして視線を氷室さんからあたしに移した後、震える声で問われた内容に、あたしは小さく首を振った。


「…違う。氷室さんには秘密にしてた。」

「じゃあどうして…!」


どうして、だなんて。
そんなの、あたしが聞きたいよ。

急な氷室さんの登場に困惑するあたし達を知ってか知らずか、彼はゆっくりと教室に踏み込んで来る。

そしてあたし達の横まで来ると、今さっき過ぎった疑問に答えるように、そっと口を開いた。
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