恋せよ乙女

「…さっきというか今、加藤隼人と高峰が生徒会室に来たんだ。紫音が相変わらずだから、少し落ち着かせてくれ、って。」


そう言い終わると同時に、氷室さんは呆れたように微かに口角を上げる。
そして一瞬あたしに向けられた視線は、すぐに鈴木さんへと向けられた。


「ねぇ、香波。今、紫音に何しようとしたの。……これ以上僕に、キミを嫌いにさせないで。」


あたしがいる位置から、今の氷室さんの表情は見えないけれど。
若干強まった口調に、悲しく歪む鈴木さんの表情に、何故かあたしの胸も苦しくなった。


「…何、言ってるの?
私、何もしてない。それに、これ以上嫌いにさせないで、って何のこと?」


まるで、恐る恐るとでもいうように鈴木さんから紡がれる言葉は、さっきとは打って変わって弱々しい。

無理矢理笑おうとしているのか、引き攣る彼女の笑みにやっぱり胸は軋んだけれど。この状況に陥っても全てを隠そうとする鈴木さんを、あたしは許せない気がした。
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