恋せよ乙女
隼人の言葉に、氷室さんは小さく息を吐いて続けた。
「困るんだよ。今日は一日中コレだったせいで、まだ仕事だって終わってないんだから。」
「あぁ。そんなことなら、紫音使えばいいだろ。俺と違って意外と頭いいし、結構役に立つと思うけど?」
……今日ほど、隼人の言葉に感謝したことはないかもしれない。
まぁ、“意外と”ってのは余計だったけれど、氷室さんと一緒にいられる時間が増えるかもしれないのだから。
「いや、そうじゃなくて。」
「何だー。お仕事が残ってたなら言ってくれればいいのにー。
さ、行きますよ氷室さん。」
隼人のせっかくの機転を無駄にしないべく、あたしはそう言って氷室さんの手を引く。
それによって氷室さんの眉間のシワがさらに深く刻まれたけれど、気がつかなかったフリをした。