恋する受験生
「俺さ、友達の前では本当の自分を出せないっていうか…… ちょっと強がっちゃったりして。中学んときから俺は家が好きじゃなかったから、ゲーセンばっかり行ってて」
俊は、ゆっくり歩きながら、丁寧に話してくれた。
「だから、あんなにうまいの?」
「そう。ひとりでずっとUFOキャッチャーやってたらうまくなった。でも。別に景品が欲しいわけじゃない。だから、近くにいた子にあげたりしてた。それを何度か友達が見て、俺はゲーセンで女を落とすって噂するようになっただけで…… 俺は別にそんなつもりでお前にぬいぐるみあげたわけじゃないんだ」
伝わるよ。
俊は誠実な人。
私、ばかだね。
あんな一度だけの場面を見て、大泣きしちゃうなんて。
俊が軽い人なわけないのに。
「それにぃ…… あの時は、お前があまりにも寂しそうだったから。小さな声で、ぬいぐるみに話しかけてるように見えて。どうしてもあげたいなって思ったんだよ!!!」
照れくさいからか、俊はいきなり怒ったような口調になった。
「ふふ。面白い、俊!!」
「笑うな!! ぬいぐるみあげて声かけるような男に見えないだろ?」
「うん。でも、正直言うと、めちゃめちゃ泣いた」
また立ち止まる俊。
「もしかして、それで様子がおかしかったの?だから、急に勉強会やめようって言ったの?」
コクンと頷くと……
「まんまとヤラれたぁ~!!」
その場にしゃがみ込む俊。
「え?」
「そういうことか」