レクイエム
「食べ物粗末にするのはどうかと思うわ」


「……」


急に真面目になるナキは一体どんな神経をしているんだと頭痛がした。魔族はマイペースが多いと言われるが、彼女ほどのマイペースも珍しいだろう。
おまけに気も強いから手に負えない。


「そんなに面識もないのに急に許嫁とか言われても対応に困…」

「う…」


本題に戻ろうとしたところで、聞き覚えのある声がした。
クレンスだ。眉間に皺を寄せながら身じろぎをしている。


「クレンス!」


フォークを乱暴にテーブルの上に放り、彼の眠るベッドに駆け寄る。
そっと手を両手で握り締め祈るように見つめると、少しずつ彼の瞼が開かれた。


――助かったんだ…!


「お…頭……」

「無事で良かった、まだ安静にしてな」


不甲斐ない自分を、ナキが温かく見守ってくれる。見捨てずにいてくれた。
彼女に大した怪我がないようでクレンスは安心した。
が、ナキの後ろ…ソファーに見知らぬ銀髪の男が座っているではないか。
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