レクイエム
「お頭…後ろの奴は何ですかい?」

「後ろ?あぁ、アレスの事か。あたしを助けてくれたんだよ」


彼女の言葉にクレンスは息を詰まらせた。
本当はその役目を自分が果たしたかった。
走り出したナキを追いかけている途中でレッサーデーモンの大群に襲われ、倒れてしまったことを悔しく思った。
アレスは一瞥だけすると我関せずでピラフを口に運び始める。


「傷は痛む?」


己の力不足を拳を握りしめて悔いるが、声を掛けられクレンスは我に返った。


「いや、大丈夫です」

「うん。ならいいんだ」


ほっと息をついて昼食が並ぶテーブルへ戻り、取り皿に適当に料理を盛るとフォークを片手にクレンスの元に戻る。


「今のうちにしっかり食べときな」

「ありがとうごぜーやす…」


差し出された料理をおずおずと食べ始めるクレンス。


後は彼の回復を待つだけだ。刻一刻と迫る決断の時が延々に来なければいいのに。
ソファーに戻ってナキは物思いに耽った。
哀しげに表情は歪める彼女は、しっかり皿の上のパスタを平らげたのだった。
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