レクイエム

「ジレナフさん、お頭の言い付け破ってアジト出て怒られやしねーですか」


言い付けが絶対で生きてきた彼らにとって、それを破る事なんて考えられない。
どんなにどやされるか想像もつかず、恐る恐る足を踏み出している。


「あいつらが予定通り帰ってこねーんだ。ただ忠実に言うこと聞くだけが優秀な子分ってわけじゃねーぞ」


一方ジレナフはその年の割に筋肉質な体を曲げることなく堂々と歩く。リヴァーズで最も在籍の長い彼の貫禄は流石と言うべきか。
それだけに色々な苦難を乗り越えてきた彼ならではの柔軟さで、ナキとクレンスの捜索に出ようと発案した。

大の先輩に諭され、自信を付けた仲間達が、丸めていた背筋を伸ばして歩み出した。
しばらく倉庫が連なり、すぐに街並みが見え始める。


「あ、あの建物の窓際に立ってるの、お頭じゃないっすか？」

「あ、お頭だ！お頭ー！」


仲間の１人が、すぐ近くの宿屋を指して声を上げた。皆嬉しそうに手を振ってくる。

仲間達に声を掛けられたナキは嬉しいやら切ないやらで、複雑な気持ちでぎこちなく笑顔を向けた。
その時のナキの表情にジレナフは違和感を覚えたが、気付かないふりをした。