レクイエム
「こんな汗くさいあんたらの相手するのも、お宝探しなんて幼稚くさい事するのも、うんざりだわ」


もうここまで言ってしまったんだ。後戻りは出来ない。


「あたしはリヴァーズを抜けるわ」


静寂が辺りを支配する。
胸倉を掴んでいた手の力がどんどん抜けていき、ついに彼は膝をついてしまった。
落胆したのは彼だけではない。絶望したかのように顔面を蒼白にしている者もいれば、怒りで肩を震わせている者もいる。


「本気かい嬢ちゃん」


顔色1つ変えずにジレナフが問いただす。


「あんたも掴み掛かれば良いのに。そんな甘いから息子があんな腰抜けになるのよ」


嘘、嘘なんだ。
クレンスは父のジレナフにも負けず劣らず諦めが悪い。どんな相手でも最後まで戦い抜き、いつも彼が皆の士気を高く保っていた。腰抜けなんて、嘘だ。

一度深呼吸をして、ポケットに入っていた札束をジレナフに押し付けた。
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