ポケットの恋
「あ…あの」
言いにくそうに後ろの方で幸日の声がする。
「なに!?」
勢いもそのまま振り返る。
「は…反対なんですけど…」
そう言って幸日が南部と逆方向を指差した。
「あ…」
力が抜けたような声が出る。
「ごめん…」
脱力したように謝ると、突然幸日が噴き出した。
「え…どうしたの…」
「だって…なんか…可笑しくて…」
幸日は途切れ途切れに答えるとなおも笑い続ける。
それにつられて南部も思わず噴き出した。
そして二人で目を合わせると、ひとしきり笑い声をあげた。
< 59 / 341 >

この作品をシェア

pagetop