夜  話  
思わず尋ねた俺に、女はただ視線だけを投げ付け、しぶしぶといった素振りで言った。


「泣いてなどいない。
ただ………いつまで待てば良いのか、とな。」


笑えばきっと印象も変わるんだろうが、俺が見ている前では、女は冷たい表情を崩さないままに言った。


「わが君は忙しくあられるのだ。
………わたしなどとの約束など、つい忘れてしまうほどに。」


ただ……と、女は続けた。


「我儘なわたしの心が、あの方を求めるのだ。

逢いたい、と。

触れたい、と。」
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