夜  話  
だが女を包むように、白く激しく。


しかし、静かに燃え上がっていた激情の炎は。


目に見える程に、立ち上っていた渦巻く感情は。


突然に消滅した。


「あの方の心が欲しいだなんて、贅沢は望まない。

あの方の傍にはべりたいだなんて、我儘も言わない。

ただ。

ただ、ひとめお会いして。

あの方に触れたい。

………ただそれだけ、なのに。」


煌めく涙を一粒落とし、女はそう呟くと、着物の裾が汚れるのも気にならぬ風に、その場に座り込んだ。
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