夜  話  
「おいっ!大丈夫かっ?」


何かあったのかと。


心配になって、俺は女に声を掛ける。


だが、女は答えもせずに地面の上に手を伸ばした。


そして、その白い指をそこに咲く小さな花に絡めると。


ふつり、と摘み取った。


「……………あの方の心を。」


俺の問いには答えぬままに、女は独り言のように呟く。


「せめて、この花程度にでも。
あの方の心の無聊をお慰めできればよいものを。」


はらはらとこぼれる涙も拭わぬままに、女は切なる声で絞りだすように言った。
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