夜  話  
腰に結んだ大輪の花のような緋色の帯を揺らしながら、静かに歩み去ろうとする女の後ろ姿に俺は思わず声を掛けていた。



「待てよっ!」




だが、何故自分が女を呼び止めたのかもわからず、俺は続ける言葉に困ってしまった。


「…………お前の名前は?」


気の利いた言葉も思いつかないままに、俺は間抜けた事を聞いてしまった。


高貴な身分に仕える立場の女が、物怪と呼ぶ存在に名前を明かしてくれる筈などあるわけがないと言うのに。
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