夜  話  
そして、言葉もなくただ立ち尽くす間抜けな俺をそのままに。


深衣はさらりと裾をひるがえし、腕にはまるで赤子のように、大切そうに都忘れの花を抱き。


月を一度見上げたあと。



するすると歩み去った。





その後ろ姿を、俺はただ立ち尽くしたまま、ぼんやりと。



ただ。



見送った。
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