夜  話  
「……………皎?」


ふと、近くに皎がいるような気がして、わたしは段々と濃くなってきている夜の気配の中へと呼び掛けてみました。


変わらず豊かに降り注ぐ黄金色の月の光の中で、わたしの声は溶けるように消えてゆきます。


しかし、それに応えるあの涼やかな声は。


その持ち主の美麗な姿は。


何故だか、現われてはくれないのでした。




「…………皎。」


わたしは、吐息と共に再び彼の名を口にしていました。
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