夜  話  
大きくあたりを照らしだす、月のまわりは香り豊かなラベンダー色に。


そして、月影は濃紫に。


過ぎ去る春の名残のように、甘いかおりが風にのって、わたしの元へ届きます。


胸の奥まで、甘く染めあげるその薫りは、クチナシの花の薫りでした。


そして、その薫りは風景の中に溶け込んで、わたしを淘然とさせたのでした。
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