夜  話  
『あまりにも動きが少なすぎるため、なんらかの障害があると考えられます。』


モニターの数字を見つめたまま、わたしの方を見ることのないドクターから告げられた言葉。


その言葉はわたしの中の小さな命に向けられた言葉でした。


元気そうではあるものの、積極的な動きに欠けていると評されてしまった、この小さな命は世界を隔ててしまったあの人がわたしにくれた唯一の形あるものでした。


そうして肉体を伴った身体という、時間の枷に繋がれた命の器を欲しているかのような、あの時の皎の言葉。
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