なんでも屋 神…第一幕
「あの人がそんな事言ってったんだ。」





一葉は一階の喫茶店から取り寄せたブルーマウンテンに見向きもせず、何処か果てしない遠くを見つめるように、真っ暗な窓を眺めている。



一葉の話しによれば、この二ヶ月は援交やヒロの知り合いだという男に紹介された、全身リップの風俗で働いていたらしい。



因みに未だ１４歳の女の子がだ。



そこで一回話しを区切り、また遠い闇を見つめる一葉。



「私、去年まで駅前にある進学塾に行ってたんです。そして中学二年に上がる前、冬の塾の帰りにホテルに若い女の人と入っていく父親を見たんです…。」



一葉はそのアーモンド型の大きな瞳に、収まりきらない程の涙を溜めて俺を見据えた。



「その瞬間に私の中で幸せな家庭像が壊れました…そして、その事に何も気付いていない母親にも嫌悪感を抱くようになったんです。」



特に寒い季節でもないのだが、小刻みに震える一葉にそっと自分が着ていた上着を掛けてやった。


そこから一葉は堰を切ったように話し始めた。



学校が好きではない事、さっきまで一緒に居た奴等も年上だが、くだらないい奴等だという事、そして一生懸命に自分を育てている両親二人に対して、強い嫌悪感を持っている自分自身を嫌っている事を…。
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