なんでも屋 神…第一幕
中華包丁を力無く下げながら戻ってきたコックは、親指で上の階を指さした。



このコックが顔色を変えて追いかけてきたのは、三階が中国本土に金を送金する地下銀行となっているからだ。



勿論マネーロンダリング(現金洗浄化)も行っている。この[風林飯店]の周りに中国の店が増えた事で、小龍の力量が伺える。



三階に上ると、改装したらしく扉や壁等は無くなっていた。



目の前に現れた暗幕のようなカーテンを潜ると、札束を数えそれを輪ゴムで止めている浅黒い肌をした男達が五人。



その脇を素通りし、区切られた黒いカーテンを潜ると、照明の落とされた薄暗い部屋に、黒檀のデスクが置かれた部屋に出た。



壁の脇には妖しげな瓶が並べられ、デスクの後ろには黒革のチェアーだけが置かれている。




「神さんじゃないですか、それに奏さんも。懐かしいですね。」
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