なんでも屋 神…第一幕
どうやら右側にもう一部屋有ったらしく、小龍は懐かしげな顔を見せながら歩いてきた。



小龍も日本に来て五年、偶にイントネーションの違う所が目立つぐらいで、日常会話は問題無く出来る。



「久しぶりだな小龍。随分頑張ったみたいだな。来る途中の街並みを見て分かったよ。」



小龍は少し照れながら顔の前で手を横に振る。



「まだまだですよ。北京に上海、福建や中東の奴等を根刮ぎ叩き潰すまで、本国には帰れません。」



この辺りは北京や中東の店が多い地帯だった。それを目立たなくさせただけでも、小龍の働きは見て取るように分かる。



密入国で入ってきた女から密航料を取り、店からは見締めを取る。男は真面目に働くが、賃金が安すぎて自ずとマフィアとなる道を選ぶ。これが大凡の道筋だ。



「今は亡き兄の大龍なら、私より早くこの街並みを作りましたよ…。」



小龍の目には虚ろな黒さだけが宿っていた。俺には、その瞳が昔より血に染まったように見える。
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