なんでも屋 神…第一幕

「兄弟や家族の為に命を賭けるのは、お前等だけじゃ無い。俺を敵に回したのが失敗だったな。」



透明にも似た小龍の表情に、魂が宿ったかのように火が灯り紅潮していく。



「黙れ黙れ黙れ！アンタも大龍も俺を見下しやがって！アンタが思っているより、マフィアの血の掟は残酷で無慈悲なんだよ！私の兄、大龍が何故死んだのか教えましょうか？大龍は幼なじみの女と、黒龍の掟を裏切って逃亡した…。」



緊張の糸が張り詰める工場内。誰一人として小龍の思い出話しを遮ろうとする者は現れず、離れている財津の荒い鼻息まで耳に入ってくる。



「その大龍と女を殺したのは黒龍の追っ手…その指令を出したのは、誰であろう父である老龍。私は老龍が間違っているとは思えない。私達兄弟は、幼い頃からそう教え込まれてきたから。本土では副頭領にまで上り詰めておきながら…組織を裏切って逃げた大龍が情けない！」



あれだけ心酔し、大龍の事を話す時は明朗としていたのに…。



「だが、私はそんな情けない大龍に、幼き頃から何一つ勝てなかった。そんな時に神さん、貴男が帰ってきたんです。私には運命とすら感じましたよ。神さんを欺き、亡き大龍の面影を追い越す…だがそれももう叶わなくなった今、生きている意味すら感じ無い。殺したいなら殺せばいい。私はもう愛すべき友も兄も失ってしまった…。」