なんでも屋 神…第一幕
…思いがけぬ言葉に、左手からタバコがすり抜けてコンクリートの床に落ちた…。



「お前が…真美を?」



「気軽に名前呼んでんじゃねー!お前が殺したんだろうが!お前が粋がって生意気にも花田の兄貴に逆らうから、あんな事になったんだ!」



鬼面の表情から流れ出す、一筋の儚くも悲しい涙…真美が死んでからもう二年が経つ。家族以外で涙を流してくれるの者は、もう居ないと思っていた…。



「ざけんじゃねーよ!元はと言えば、素人の神に腐った話しを持ち込んだ花田の糞野郎が悪いんだろうが!」



静まりかえる工場内に、熱いノリの怒声が響く。兄ぃからでも、俺の過去を聞いたんだろう。



相馬に照準を定めていた瞳が曇る…言葉など対して交わしていない…交わしてはいないが、相馬の気持ちが分かるような気がした。



憧れていた花田を殺した俺…知らず知らずの内に恋い焦がれていた真美を奪った俺…身体を不自由にした俺…全ての原因…元凶は俺だ…。
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