なんでも屋 神…第一幕
恐怖を耐え抜き、充実した瞳とコルトを相馬に投げ渡す。



相馬の瞳に映る、先程まで燃え盛っていた紅蓮の炎は、マッチ棒程の火力に低下していた。



既に確率は3分の一…引き金を引く人差し指にも、最初と違い力が入らなくなっているだろう。



橙色にも似たマッチの火を宿す瞳とは対照的に、青褪めていく表情。その相馬の顔色が余波の如く[三谷組]にも打ち寄せる。



自分の消え行く意識と同調して、動かない様子の相馬の左手。



「此処で止めてもいいんだぞ。」



俺の挑発が相馬の意識と左腕を動かした。最早、押し寄せる恐怖感で震える事を隠せない相馬の全身。



それでもコルトを手にする相馬には、その勇敢さと賞賛を認めて拍手を送りたくなる。



意を決したように双眼を見開き、奇声にも似た絶叫を上げる相馬。



その声が工場内に響き渡り、寂しげに儚く消えていく。
< 286 / 309 >

この作品をシェア

pagetop