-roop-
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ザアアアァァァーー


「…何か本降りになってきたなぁ……」


私と誠さんは中が空洞になったアスレチックの中に身を隠していた。




私の右手を握る優しい左手。

誠さんの手の温もりは、こんなにもたやすく私の心まで入り込んできてしまう。



アスレチックの中と雨に濡れる外が、まるで別次元の世界のようだ。

ただアスレチックの中に入っただけで、驚くほど雨音が鈍くなり、そして…こんなにも誠さんを傍に感じる。



「千夏…?」


「ん…?」


「ごめん…あれ…さ……嘘だから……」


「嘘……?」


私が不思議そうな顔を浮かべると、誠さんは申し訳なさそうに少し視線をそらした。




「…前の……千夏ならって…いうやつ…」




--前の千夏なら…そんなこと言わなかったのに--



「…あ……」


「記憶を失う前の千夏も……今の千夏も……全然変わってねぇよ……」


「えっ…?」


千夏さんと…私が…違わない……?

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