-roop-

「千夏はな…気付いたときにはもう…孤児院みたいなところに居たんだと…」


「孤児…院…?」


「そっ!だから…お父さんにもっ、お母さんにもっ、…会ったことないんだってさっ」


誠さんは組んだ足を大袈裟に揺らしながら、天井を見上げた。

内容の悲しさを払拭するように、わざと明るい声で話す誠さん。



そっか…だから…


その時ふと千夏さんの声が頭を過ぎった。




『貴方くらいの歳のときに…いじめに遭っていたの』




もしかして…それが原因だったのだろうか…


両親がいない…か


私の本当の両親はどんな人だったのだろう…?



愛してくれたかな…?

抱きしめてくれたかな…?

必要としてくれていたかな…?



あまりにも分からなすぎて、自分には両親なんてものが存在しないような気さえしていた。



これも…

誠さんに聞けば教えてくれるだろうか。



名前も分からない私のことを笑いながら教えてくれるだろうか。

この罪人の過去を。





…あまりにも愚かな自分の思考に嫌気がさした。
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