君の声が聞こえる
 答えながらも、胸がドキドキ鳴っている。

雅巳の母親の表情を見ていると、あまりその事に触れない方がいいような気がする。

「……そう」

 考え込むように優美な顔をしかめて雅巳のお母さんは一つ息をついた。

「どうしてそんな事、聞くんですか?」

「良枝ちゃん、雅巳と付き合い長いから分かると思うけど、あの子はあんな姿をしているから、よく男の子に声をかけられていたみたいね。でも、今まで特定の人と付き合うような事はしなかった。どうしてか分かる?あの子はね、他人に自分の事で負担になるようなことはしたくない子なの。心臓の発作が出ても誰にも気付かれなかったら、薬だけで我慢してしまうくらいにね」

 バレていたんだ。

私は雅巳の母親の顔を見つめた。

「良枝ちゃん、そんな顔しないで。あの子の母親を二十年もしていれば、そんな事ぐらい分かるわよ」

「でも……」

「あの子が、去年の秋ぐらいから、悩んでいるようだったから気になっていたのよ。苦しんでいても口に出すような子じゃないし、見守ってきたけど、最近ますますひどくなってきたから、さすがに放っておけなくなってきたのよね。
< 105 / 225 >

この作品をシェア

pagetop