君の声が聞こえる
 僕のプロローグ

《加藤むつき睦月編》

一目で恋した。

一目惚れ、という言葉が存在する事は僕も知っていたけれど、自分には無関係な言葉と認識している部分が僕にはあった。

僕が今まで好きになった子は基本的に、容姿よりも内面的に優れた子が多かったと自分でも自覚している。

自分でも、そんな自分を好ましく思っていた。それはつまり、自分が人を外見で判断する人間ではないと思っていたのだ。

それなのに。

須藤雅巳、という名前の彼女を見た時、僕は自分でも理解のできない激しい感情に支配された。言葉で言い表す事のできない、激しい熱情とでも言うのだろうか?

以前、体に稲妻が走ったような、などという表現を用いた文章を目にした事がある。

そんな感覚に近い情のようなものが、突然僕を支配したのだ。

彼女は綺麗だった。

そんな陳腐な言葉では片付けられないほどに、美しくて神々しかった。

彼女を初めて見たのは大学のキャンパスだ。

桜の花びらが舞う四月、僕は彼女と出会った。

僕の通う事になった国立大学は地元でも有名な大学で、大きな敷地内には大学病院が併設されていた。この大学の経済学部の一年に在籍する事が決まっていたのだ。
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