君の声が聞こえる
入学式の二日前、僕は突然、大学の校舎を見に行きたくなった。

一浪していた僕は、自分の合格がまだ信じられなかったのかもしれない。

僕の生家から歩いて十分のところにあるその大学は、正直言うと僕の第一志望の大学ではなかった。僕は都内の大学に通う事を希望していたのだ。


しかし、一年の浪人生活は本当に苦しかった。勉強のためだけの生活にオサラバしたかった僕は、さっさと希望していた大学を諦め、地元の合格確率が高い結果が出た大学に第一志望を変えた。それがこのS大学だったのだ。

苦しい一年を労うかのように、僕はゆっくりとキャンパス内を練り歩いた。

この大学はとにかく広大な敷地を有する大学で、大学内に大学病院と大学病院専用の駐車場、S大球場、体育館二つに弓道場、グラウンド、その他に各学部の校舎が存在していた。とにかく想像外の広さなのだ。

細かいことを言えば、敷地内に、生協(生活協同組合)が学生食堂と同じ建物内にあったり、プールや付属図書館などもあったりする。

他にも何に使っているのかよく分からない建物が点在するが、僕はとりあえず、一番お世話になるであろう経済学部の校舎を訪れた。

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