禁色の囚人~きんじきのとらわれびと~
怨んでも怨みきれない相手なのに。



英里奈は、ちゃんと自分の中で気持ちの整理ができてる。



やっぱり、英里奈は凄いよ。



「ごめ…ありがと…。」



涙で言葉にならない。



「いいよ。奏凛の方が、辛かったでしょ?もう、何週間もご飯も食べられなかったって宮埜さんが言ってた。こんなにやつれちゃって。」



そう言いながら、英里奈も涙をこぼしてる。



「あたしは…。」



英里奈みたいに、向き合うことも出来なかった。



ご飯を食べることも、空腹も感じないくらい。



現実を見るには辛すぎたけど。



向き合うことすら、考えたくもなかった。



「なぁ…オレじゃダメなのは分かってる。でも、こんなになるまで苦しんでる神楽さん見たくない。オレがそばにいるから、一緒に逃げよ?」



あたしを抱きしめてる晴沢の腕に力が入る。

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