君を愛す ただ君を……
「ちょ…涼宮?」

越智君があたしの両手首をつかむと、瞼を何度も開閉していた

だって…好きなのに、諦めなくちゃで

越智君ともっと一緒に居たいから、手術をしようって思ったのに、手術するお金のために、越智君の前から姿を消さなくちゃいけないなんて

意味がわからないよ

「あたし…越智君が好きだよ。好きだけど、今日で最後なんて嫌だよぉ」

あたしの目頭が一気に熱くなって、涙で視界が歪んだ

「は? 何、言ってんだよ」

越智君が驚いた声をあげた

あたしの手首を掴んでいる越智君の手に、力が入ったのがわかる

痛くて、越智君の手のひらが熱かった

「越智君のお母さんに会ったの。今朝、学校行く前に……あたし、今回の手術に払うお金が無くて……。越智君のお母さんが大金をあたしに出してきて、越智君の前から姿を消せって。部活を始めたのはあたしのせいで……まあ、その通りなんだけど。将来のある越智君には、あたしみたいな病気持ちには相応しくないって」

「…で、涼宮は金を受け取ったのか?」

あたしはコクンと頷いた

「ごめんなさい」

越智君の顔が見られなかった

絶対の怖い顔をしてあたしを見ているってわかっているから

顔をあげて、越智君の気持ちのこもった視線を受け止められるほどの勇気が、あたしにはなかった

「ほんとに…ごめんなさい」

あたしはもう一度謝ると、手首を掴んでいる越智君の手が緩んだ

「越智君ともっと一緒に居たくて、手術するって決めたのに。その手術代が、ウチにはもう無くて……だから、今日で最後にするって越智君のお母さんに……」

「…けんなよ」

越智君が舌打ちをすると、怒りで肩が持ち上がる

「俺に何も言わないで、姿を消すつもりだったのかよ。俺が今、聞かなかったら、初めてのデートで、浮かれたまま俺は家に帰って……全てを母親から聞かされてたのかよっ」

越智君が鼻の穴をふくらませて、息を吐き出すと髪を力任せに掻き毟った

「ふざけんなよ! 何のために寝ずに勉強して、期末を受けたのか…。無意味じゃん。俺の努力が……」

越智君がその場に蹲ると、額を手にあてた

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