君を愛す ただ君を……
【番外編】窓から見える風景
『アキちゃん、私が必ず治してあげるからね。一緒に頑張ろう』

治らない病気だといわれて、たらい回しにされた最後の病院で院長先生の息子が、優しくそう声をかけてくれた

ただの気休めだと思ってた

田舎の大きな病院に、とうとう送り込まれた

私は牢獄に送り込まれた犯罪者な気分になったのを覚えている

どこに行っても、医師は顔を曇らせて首を横に振ってきた

ただ死を待つばかりの身体だと思っていた私に、希望をくれたのは越智先生だった

いつでもにこにこと微笑んで、私に元気をくれた

入院費も、手術代も払えない私に、最高の治療をしてくれた

払えないって知ってるのに、『出世払いでいいよ』って笑って言ってくれた

「まだ、あったんだ」

私は、病院の前に立つと、大きな建物を見上げた

病院の自動ドアをくぐりぬけると、私は受け付けの女性の元へまっすぐに向かった

「あの……越智愁平先生っていらっしゃいますか?」

大きな鞄を床に置いて、あたしは受付嬢の綺麗な女性に話しかけた

「院長に何か?」

あ…あの人、院長先生になったんだ

「15年前にこの病院でお世話になった者なんですけど、近くに来たので越智先生に挨拶をしようと思いまして…」

「そうなんですか。ちょっとお待ちください」

受付の綺麗な女性は、さわやかな笑みで微笑むと電話を耳につけた

誰かと話し終えた受付の女性が顔をあげると、私に頭をさげた

「申し訳ありません。院長は、席を外しているみたいで」

「そうですか。わかりました。また…来ます」

私はペコっと頭をさげると、重たい鞄を持ち上げるてヨロヨロと出口に向かって歩き出した

まあ、すぐに会えるとは思ってないけど、この病院にいるってことだけはわかったから

ま、いっかって感じかな?

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