君を愛す ただ君を……
「実を言うと、昨日…そのことを確かめたいって思って電車を降りたんだ。聞くきっかけがつかめなくて、結局聞けず終いだったけどね」

越智君、知ってたんだ

録画の予約を忘れたなんて、嘘をついて

あたしは越智君から離れると、二人で肩を並べて歩き出した

「前の病院でね…15歳までしか生きられないって言われたの。それで、今の病院を教えてもらって、引っ越しをしてきたの。あたしの治療代とか、急な引っ越しや家の購入で…ウチ、すごく貧乏になっちゃって。車を売ったり…ママの実家の畑を売ったりして、あ、パパの大切にしてたバイクも売ったよ。迷惑をかけて生きてるのが、すごく苦痛だった。それも15で終わるって思ったんだけど…結局まだ生きてる」

あたしは少し前の地面を見つめながら歩いていると、ぎゅっと越智君が手を握ってきた

「生きててくれて、俺は嬉しい」

「ありがと。でもほんとにあたし、皆に迷惑をかけてばかりで…。金食い虫だし、親には心配かけてばかりだし…おかげで従兄まで監視役に来ちゃって」

「それだけ、涼宮には生きて欲しいんだよ。一日でも長く心臓が動いていて欲しいって思ってる。父に…手術を勧められなかった?」

「一度だけ…ね。でも断った。お金、かかるでしょ? これ以上、親の負担になりたくない。手術しても、成功の確率も低いって聞いたし」

越智君の手に力が入った

「お金の問題じゃないよ。生きるってことは、お金じゃないんだ。お金よりももっと大切で、貴重なんだ。だから…」

「越智君、いいの。あたし、手術は受けない」

怖いの

成功の確率が低いってことは、手術中に死んじゃう可能性もあるわけでしょ?

まだ死にたくない

もしかしたら…っていう低い可能性にしがみつけるほど、あたしは勇気がないよ

< 36 / 507 >

この作品をシェア

pagetop