君を愛す ただ君を……
診察室内で、薬品の整理をしていた看護師に、越智先生がにこりと笑いかけた

「ええ。外来ではないですが、一人呼びだしていた子がいてね。少しここを使わせてもらっていいかな?」

「は、はい!」

看護師は、薬品の入っている棚を閉めると、そそくさと診察室を出て行った

「涼宮さん、ここに座ってもらえる?」

「はい、すみません。外来の日ではないのに…」

あたしは謝りながら回転椅子に座った

「昨日、愁一郎から話を聞いていたから。別に平気だよ。今日はとくに出かける用事もなかったしね」

越智君と同じ声で、越智先生が口を開いた

親子って声が似るんだなあ…と、思わず聞き入れてしまう

「今までのカルテと昨日、愁一郎の話を聞いた限りだと…一度、精密検査を受けるべきだと思うよ」

単刀直入に、越智先生が言葉を切りだした

「え?」

「きちんとした検査は、小学以来やってないでしょ? 前の病院でやったっきりで、ずっと拒否してるみたいだね。今は数年前よりずっと、高度な医学技術へと進化しているんだ。検査を受けて、治療してみない?」

先生があたしの顔に視線を動かすと、にこっと笑いかけた

あたしはぎゅっとスカートを握りしめると、下を向く

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