君を愛す ただ君を……
「涼宮、これ」

大きな影があたしの前に出来たと思うと、越智君があたしの眼前に手を出した

白い錠剤が越智君の手の中で転がっている

「え?」

「飲むと楽になるから」

越智君が、ホットレモンのペットボトルをあたしの手にそっと渡してくれた

「越智君?」

「親父が処方してくれた薬だよ。発作が起きた時に、渡してくれって」

越智君が飲んでくれと言わんばかりに、手を前に突き出した

あたしは錠剤を指で掴むと、ホットレモンで食道の中に流し込んだ

「保健室で休もう」

越智君があたしの身体を支えてくれる

あたしは首を左右に振った

「もう、平気だから。ごめん、しぃちゃんに呼ばれたのに」

あたしは越智君の腕を払うと、一人で立ちあがった

「保健室で休め。顔色がよくない」

越智君が強い口調で、言葉を発した

「そうだよ。陽菜ちゃん、少し休んだほうがいいって」

リンちゃんもフェンスの向こう側で、頭をぶんぶんと振って頷いていた

「本当に、平気だって。テスト勉強で、きっと寝不足だったのね」

あたしは肩を竦めると、苦笑した

「休め」

「平気だもん」

腕を掴もうとする越智君の手を、あたしはまた振り払った

「涼宮っ! これ以上、悪化させるな」

「良くなりようがないのに…悪化も何もないじゃない」

「これ以上、悪化させたら手術が受けられなくなる」

越智君があたしの腕を掴むと、今度は振り払われないようにぎゅっと強く力を入れた

「ちょっと待って! 悪化とか、手術とか…何、それ!」

リンちゃんが、がしゃっとフェンスに掴みかかると大きな声を出した

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