君を愛す ただ君を……
越智君が手を軽く振ると、外科外来の待合室から遠ざかって行った

あたしは、越智君の背中を見送っていると、ママがさっきまで越智君が座っていた場所に腰を下ろした

「格好良い子よねえ」

ママがしみじみと言葉にする

「ママ、見てたの?」

「ちょっとねえ」

ママがにこっと笑った

「大樹君から話は聞いてるわ」

「大ちゃん、怒ってるかなあ」

「怒るわけないじゃない。陽菜の幸せを一番に考えてるわよ」

「ママは? ママは、大ちゃんを応援してたんでしょ?」

「え?」

ママが首を傾げた

すごく不思議そうな顔をしている

「なんで? どっちだっていいわよ。陽菜が隣にいて、幸せだって思える人なら誰だって反対はしないわよ」

「ありがと」

ママがにっこりとほほ笑むと、あたしの肩をぎゅっと抱き寄せた

ママの温かい手が、あたしの身体を包んだ

「陽菜に彼氏ができたなんてねえ。夢のようだわ」

「うん。あたしも不思議な気分だよ」

あたしとママはくすくすと肩を揺らしあって笑い合った

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