DARK†WILDERNESS<嘆きの亡霊>
そんな光景を茫然と見ていたファーレンだったが、ルシフェルのすぐ側に落ちているものを目にし、ハッとして目線を上げる。
落ちていたのは自身が放った愛用の槍。
ルシフェルが倒れた原因がそれなのではないかと咄嗟に思い、すぐさま駆け寄るファーレンの目線が紫紺の瞳にぶつかった。
「大丈夫。傷は負っていない」
全て分かっているとでもいうように、ルシフェルを背で支えた獣がファーレンのほうへ首を傾け、静かにそう言う。
神秘的な色を湛える瞳を細めファーレンを見つめたまま、獣はゆっくりとルシフェルを地面に降ろした。
そして、不意にその身体から淡い輝きをはなちだしたかと思うと……
ファーレンの目の前でみるみるその姿を変形させていく。
「え……? あ……?」
驚きを通り越し、そんな声しか発せずにいるファーレンの前から銀色の獣は姿を消し、かわりにいつの間に現れたか、銀髪が印象的な背の高い青年が佇んでいた。
いや、現れたというのは間違いだ。
「驚かせてしまいましたね?」
物静かな表情で穏やかな表情で語られた言葉は、口調こそ違えど、つい今しがた耳にしたばかりの声と全く同じ声。
そう、今の今まで目の前にいた獣。それが、姿を変えたのだ……人の形へと。
「君は……一体?」
戸惑いがちに訊ねるファーレンにむかい、青年は微かに笑みを浮かべ
「僕ですか?」
一呼吸置き、答えた。
「僕は……ただの魔物ですよ」