DARK†WILDERNESS<嘆きの亡霊>




だが、そんなこと出来るはずも無い。

そうすれば、彼がどんな目に逢うかは目に見えている。

ディラハンに近い西方面の要であるカラヤには、ディラハン兵に村や町を襲撃されてやむなく生まれ住んだ土地を捨てねばならなかった者が多く移り住んでいる。

その際に家族を失った者も多い。

エルカイザの中でも一番にディラハンからの被害を被っているのだ、その恨みは根深い。

よくて半殺し。いや、確実に死に至るほどの暴行をうけるのは明らかだ。

そうなるとわかってて、手当てした患者をむざむざとその中へ放り込むわけにはいかない。

彼らは分かっていないのだ。

報復をすること、その行為が、彼らが憎む敵がとった行為となんらかわらないことを。

怒りや憎しみに捕らわれて、そんな単純なことすら分からなくなっている。

「それじゃ奴らと何も変わらないじゃないか」

ぽつりと呟いたアンナの声は外からの騒音にかき消されランスとジノには届いていない。



< 555 / 729 >

この作品をシェア

pagetop