DARK†WILDERNESS<嘆きの亡霊>


安堵にも似た気持ちを感じているミカエルとは相反して、その場に居合わせた人々の間には気まずい空気が漂う。

目の前に不意に現れた男の放つ存在感は異様で。

その上、男が吐く棘のある言葉には言い返す余地を与えない威圧感がある。

何があっても自分達はもう、あの診療所のドアにすら近づくことも出来ない、そう思わせるだけの奇妙な強制観念に襲われそうになる。

声も発せず、けれど諦めきれない気持ちが、かろうじてまだ足をその場に縫いとめているにすぎない。

「……るさい。うるさいうるさい!!」

身を縛る脅迫観念をなんとか打ち破り、一人の少年が声をあげた。妹の仇を討ちたいと訴えていた少年だ。

「守られたくて守られてるわけじゃない!! 俺だって二十歳になったら戦場にいくさ……言われなくたって覚悟もちゃんと……」

「フン。覚悟……だと? なら」

声を上げた少年へジュードは目線を流すと、おもむろに懐に手を入れ、取り出したものを少年へ向けつきつけた。

「今すぐここでやってみるか? 命のやりとりとやらを」

銀色の銃身が月明かりを受けて鈍く光る。それを見た少年の表情が強張った。

「ああ……いきなり銃相手は早かったか? ならばまずはあれでも相手にするか?」

少年の表情に怯えを見たジュードは、ふふ、と笑みをもらしながら上方を仰ぎ見る。


< 572 / 729 >

この作品をシェア

pagetop