DARK†WILDERNESS<嘆きの亡霊>
そんなアレックスの様子に気付いているのかそうでないのか、一旦伏せた顔を窓の方へ向け
「わしにも若い頃は大切な人がいてな、休暇のたびに会いにいったもんだ。結婚の約束もしてたんだがね。彼女のほうもな、いつもそりゃあ会うのを楽しみにしてくれてたんだ……」
遠い目をして語りだした。
「三年の兵役を終えたわしはすぐに彼女に会いに行った。ようやく一緒になれる時が来たと浮かれ足でね……ところがいつも駅まで迎えに来てくれていた彼女の姿がそこにない」
そしてひとつ長い吐息を吐くと、ぽつりと言った。
「亡くなってたんだよ」
その言葉に鼓動がトクリと跳ね、アレックスは瞳を見開いた。何故か、以前クロードにボルグの死を聞かされた瞬間のことが頭をよぎる。
「最後に会いに行って僅か一ヶ月ほどの間に……兵役が終わる日まであと少し。あと少し耐えればすぐに会える……そう言ってたのに……流行病でね、あっけなく居なくなってしまった。彼女の家族に聞かされた時は、悲しいと思うより先に信じられなくてね」
よく知る人間。自分の心の多くを占める人間の死を聞かされるその感覚はアレックスも知っている。
ただただ信じられず。現実が目の前で崩れて夢でもみているような、奇妙な浮遊感と、ひたすらに信じられない、信じたくない気持ち。
知っているだけに、なんと言えばいいか分らず、車掌から目を逸らし、俯く。
過去に思いを馳せる老いた顔に浮かぶ寂しげな表情がやけに痛々しくて……