DARK†WILDERNESS<嘆きの亡霊>


目にした異様な二つの光景が抱かせた腑に落ちない感覚が、早足を駆け足へと加速させる。

小走りで駆け込んだ目的の路地。足を踏み込んだ瞬間にアレックスの瞳に映し出された光景もまた、奇妙なものだった。

路上に転々と無作為に転がる木切れや空き瓶。割れた携帯用のランプ。

まるで誰かが慌てて落としていったかのようなそれらに混じり、散乱する黒い羽根。

何かがあったとしか思えない、異変を濃く匂わせる有様に思わず足を止める。

この先に見える背の低い小さな建物。

そこがもし、間違いなく目的の診療所だというのならば……

瞼を瞬かせた拍子に、駅まで見送りにきてくれたガーフィールドとリリスの顔がフラッシュバックのように蘇り、アレックスは僅かに唇を噛んだ。

もしも、彼らの家族に何かあったというならば、自分はどんな顔でそれを伝えれば……

目の前に広がる光景が決して穏やかなものではないゆえに、一瞬不安がアレックスの中に広がる。

(……いや、決め付けるな。まだ、何も確認したわけじゃない)

自分に言い聞かせるように胸のうちで呟き、ようやく足を踏み出す。

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