DARK†WILDERNESS<嘆きの亡霊>
とっくに点灯許可時間帯を過ぎているため街灯もなく、上空で淡い光を溢している月の光も、建物と建物の隙間に伸びたこの細い路地では、入り口近くまでしか届かない。
静寂と暗闇に支配されたその奥の様子を知るには、近づいて確かめるしかない。
壁に沿うようにしてじりじりと前へ進む……と、路地の中間ほどまで進んだろうかという所で、何かの匂いが鼻先を掠めた。
(……煙……?)
その匂いが何の匂いなのか、アレックスはすぐに気付いた。それは、よく知っていた人物が常に体に纏わせていた匂い。
懐かしさと、ちりりとした痛みを呼び起こす匂い。
(煙草……?)
この先に、誰かいる。しかも建物の中ではなく外。今、自分が進むこの路上の先に……
そう理解するのと、闇になれてきた視界が動く二つの影を捉えたのと同時だった。
「あら?」
振り返った影の小さい方が声をあげる。
聞き覚えのある声。
「え……?」
急いで胸元を探り、首に下げてはいたものの、不測の事態を警戒し、自分の姿を晒さないようあえて使わずに居たペンダント型の照明装置を取り出し点灯させる。
一見金属プレートのようにしか見えない薄く小さな長方片が、白く強い発光でもって、瞬く間に周囲十数メートルを照らし出す。