DARK†WILDERNESS<嘆きの亡霊>
胸元の内ポケットにしまっていた封書を取り出し、アレックスはアンナへと手渡す。封書の表に書かれた宛名を確かめたアンナは
「うん。確かに親父の字だね」
頷きながらそう呟いた。嘘をついてるようには最初から感じなかったが……確かにこの青年はリリス達に頼まれてここに来たのだ。
ならば……
「ごめんなさい。彼は関係ないんです。たまたまここに来た彼に私たちが便乗しただけ。この一件には無関係です」
新たにアンナに浮かんだ疑問はすぐにミカエルの言葉でフォローされる。だが、その後半部分に含まれた<一件>という言葉に、ああ、やはりかとアンナは嘆息した。
「申し訳ないが。患者をだすわけにはいかない」
反逆罪に問われるだろうかとい懸念がないわけではない。けれどアンナは精一杯気持ちを奮い立たせてそう言った。
これは自分の信念に関わることで、人の命に関わることなのだ。ここまできて簡単に引けはしない。
「やっぱり、いるんですね。ディラハンの兵士が」
静かに問い返すミカエルの視線が衝立の方へと向けられる。
「私の、患者だ」
アンナはその言葉を正す。怪我人に敵も味方も金持ちも貧乏人も関係ない。皆等しくただの患者。それがアンナの信条だ。