DARK†WILDERNESS<嘆きの亡霊>
そう、アレックスもミカエルも。戦うことだけが全てで、考えることはその役目に含まれては居ない。
人であることを許されなかった。また人であること自ら捨てた。エルカイザという一国の歯車のひとつであるそんな彼らの存在意義にそんなものは無用なもの……だった。
「ならば、尚更。患者は渡せない」
だがアンナは人として生きている。医者として命を見つめて生きている。だから考える。だから知っている。
自らの行動一つで左右される命の重みを……
強く唇を噛み締め、ミカエルを遮るようにその前にアンナは立ちふさがる。
ミカエルは無言でその姿を見つめていた。
自分より遥かに弱い、力なき一般人であるアンナの姿がやけに大きく見えるのは気のせいでもなんでもない。
倒すためではなく守るために立つ人の姿の大きさを、その背の広さを、ミカエルは知っている。
アンナの姿が記憶にある背とだぶり、胸が疼いた。自分を守るために立ち上がり倒れていった……広い背中……
「先生。医者先生……もう、いいです」
不意に、かすれた声が。研ぎ澄まされた沈黙に割って入った。
「あんた……っ!!」
驚いてアンナが振り返る。
衝立に寄りかかるように立つ男の姿があった。上半身を包帯で覆われた男。