DARK†WILDERNESS<嘆きの亡霊>
「手当てをしてもらい、ここまで庇ってくれたこと本当に感謝している。けれど……これ以上は、貴方もまずいのではないのですか?」
痛みに顔をしかめながらそう言う男の身体がぐらつく。
すかさずランスが側に行き、その身体を支えた。
「大丈夫ですか? まだ、無理は……」
「いや、無理をしているのはあなた達の方だ。敵兵に良くした所で見返りなどありはしないのに……」
ランスの肩を借りて近くの椅子まで近寄り、腰を降ろすと男は息を整え顔を上げた。
三十台後半といったところか。短く刈り込まれた金髪の下には精悍で引き締まった顔立ち。みるからに軍人らしい筋肉質な体つきは包帯の上からでもよく分かる。
やや細めの灰色の瞳には恐怖の色は見えず、ただただ静かに自分の境遇を受け入れているかのように見えた。
「連れていくといい。元より戦場に出た時点で、死の覚悟はしている」
「……っ」
ディラハンの男の言葉にアンナは声を詰まらせる。
軍人の覚悟。そんなものはアンナに理解など出来るはずもない。だが、男の声には確かに固い意思のようなものが見える。
立ち入れない。
差し伸べる手をも拒絶する覚悟。
理解できないからこそ、これ以上立ち入ることが出来ない……そんな、壁のようなものが確かにそこにある。