DARK†WILDERNESS<嘆きの亡霊>



二人のやりとりをアレックスは壁際からただずっと見守っていた。

今まで何度も戦場で巡りあい、斬り捨ててきた、敵兵。

自分の命を刈り取ろうと刃を向けてきた敵兵。

それが、目の前で喋っているのを見るのは不思議な感じがした。

そしてアンナは言った。敵兵にも家族がいると。

(家族……)

その言葉を聞いた瞬間に、アルマにいるアナベルとレイの姿が思い出された。

娘を案じて金を持たせたガーフィールドの、親へしたためた手紙を照れくさそうに預けたリリスの姿を思い出した。

生まれた時より家族のなかったアレックス。以前だったらその言葉を聞いても何も感じることはなかっただろう。

けれど今はそれがどんなものか思い浮かべることが出来る。

想う人を亡くした人間がどんな感情を持つかを思えば、涙を流したアナベルの姿を思い起こせる。

目の前に座る包帯に覆われた男。今まではただ防ぎ、刈るだけの対象だった敵国の兵士。

(家族が、いる)

その言葉を通して見て、初めて

(人間……なんだ)

今までただの対象物でしかなかったものに血が通うのを見たような気がした。

それは、アレックスが……アレックス自身が、自らの欠落に気付き、ただの兵器から人でありたいと思った瞬間と良く似た揺らぎをアレックスに感じさせる。

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