DARK†WILDERNESS<嘆きの亡霊>
ほぼ断定に近い問いかけ。笑顔ではあるが誤魔化しは許さないと静かな威圧感をかけてくるミカエルに対し、アレックスは黙したまま左腕をテーブルの上に出して寝かせ、その袖口を捲り上げた。
内側を仰向けに晒された前腕に刻まれた小さなタトゥー。
「ケルベロス……そう。なるほどね」
「なんだって?」
小さく呟いたミカエルの声と驚いた声を上げるアンナの声が重なる。
「なんですか? ケルベロス?」
表情に緊張を帯びたアンナに反し、ランスとジノはなんのことかわからないといった風に首を傾げた。
「王室お抱えの特殊部隊だよ。今は第二王子のクロード様が指揮を取っておられる……エリート中のエリートさんだよ。親父さんはそんな人に郵便配達みたいな真似をさせたのかい。参ったなあ」
「まったく……顔が広いのは重々承知だけど、何やってんだいあの馬鹿親父は……」
苦笑しながらランスとジノの二人に説明するジョセフの横でアンナが深々と溜息をつく。
そんな二人を横目にミカエル自身まさかアレックスがそんなにあっさり素性を晒すとは思ってはおらず、思わず小声でアレックスに尋ねる。
「いいの? そんなにあっさりそれを人前に晒して」
「ここでなら問題ないでしょう? それに知りたがったのはあなたです」
「それはそうだけど……」
「ここに居る人は此処であったことは誰にも言わない。俺も言いません。俺は只休暇中に私用でここに立ち寄っただけです」