DARK†WILDERNESS<嘆きの亡霊>
彼は自身の性を良くは思っていない。戦場に行き食事にありついても、彼はどこか苦しげな表情を見せる。
人にあらずして、時に人より人らしくさえ感じる彼は……
多分、顔見知りから生を得ることを良しとはしないだろう。
彼の種族について完全に知っているわけではないし、憶測にすぎないが……確信に近いものはある。
伝承で聞く、彼の種族とは彼は随分と違う。
「少しね。昔を思い出しただけよ……」
食事の話にそれ以上触れるのはやめて、ミカエルは最初のジュードの問いかけに答えた。
「そうか……」
ジュードは短くそう答えただけで、その唇からは言葉の替わりに薄く細長い紫煙がゆっくりと吐き出されていく。
「明日。リディルに向かうことになったわ。貴方はどうする?」
「俺は一度アルマに戻る。少し、用事を思い出した。それに団体行動はむかん」
「それもそうね」
ジュードの台詞にミカエルも頷く。素性のこともあるし、元々愛想の良いわけでもないジュードが他人と連れ立って行動するのは確かに想像するだけで違和感がある。
「じゃあ、そういうことで……とりあえず今夜はあそこにお世話になるわよ」
「俺もか?」
微かに眉根を寄せたジュードの手を引き、ミカエルは笑う。
「当然よ。だってあたしの頭撫でる仕事が残ってるでしょ」
「何?」
「あんなアットホームで居心地悪いところであたし一人で居ろっていうの? 朝までは居てもらうわよ」
そう言い、有無を言わせず診療所へと手をひいて歩き出すミカエルに、小さくため息をつきながらもジュードはおとなしく連られて歩を進める。
「ふん。やっぱりまだ子供だな」