DARK†WILDERNESS<嘆きの亡霊>
客人が待つ、宮殿入り口の扉へ向かい階段を下りながら、ラファエルは七年前の出来事を思い起こす。
その時、瞬間を思い出すことは難しい。
守護天使の脳に埋められた人口脳は、本来の脳への過度の負担を減らすために、戦闘時における情報のうちの一部にフィルターをかける。
それは元は人である守護天使に戦闘人形であり続ける為に有害であると判断される行為に関わる部分で、人ならば誰もが持つと思われる感情ゆえに苦痛をもたらすであろう行為に関してである。
事実は現場に形として残るが、その瞬間の鮮明な記憶にフィルターをかけて制御することによって、それは現実でありながら直接的に関わった意識を薄める。
現実でありながら、非現実的な、どこか夢の中で起きた事のような感覚。
そう認識することにより、自己嫌悪、罪悪感、強迫観念といった感情の干渉から遮断するのだ。
だからその瞬間を、ラファエルは、守護天使は知らない……否、思い出せないように造られている。
だが、前後の出来事は思い出すことが出来る。
あの夜のこと。
何故、皇子が命を落としたかをラファエルは知っている。