DARK†WILDERNESS<嘆きの亡霊>
大丈夫。まだ、日は高い。アナベルの店は夕方に開店だから少し休んでから出発しても間に合うだろう。
空を見上げそう判断して、ドアノブに手を掛けようとした時
「…………ません」
店内から人の声が聞こえて、リリスは一瞬ノブを引くのを躊躇った。
めったに客の来ない古書店に珍しく客人が訪れているようだ。
「何、遠慮することなく使ってくれて構わないんじゃよ。わしも勿論力になりたいとずっと思っておったんじゃ」
聞きなれた祖父の声が応対している様子からすると、客というよりは知人のような感じもする。
躊躇ったせいで入るタイミングを見失ってしまい、ドアの前でどうしたものかと首を傾げていると、
「では」
二言、三言の短いやり取りの後、挨拶の声と共にドアノブが回った。
外側に開くドアを避けようとリリスが慌てて横に飛びのくと、出てきた客人もリリスの存在に気づいたようで
「失礼」
柔らかなトーンの声で短くそう言うと、帽子を被った頭を軽く会釈させて足早に去っていった。
遠ざかる細身で長身の後姿にリリスは再び首を傾げる。